ガラパコラム 第31回目 その日ばかりのヒバカリ。 ![]() (2006・11・21) 幼少期の思い出が凄く鮮明に残っている人もいるようですが、私の場合小学生のころの思い出という ものがもんやりとしていて不明瞭で、ある瞬間を断片的にしか記憶していないことがほとんどです。 不思議と、比較的はっきりと思い出せる記憶のエピソードには必ずと言っていいほど爬虫・両生類を はじめとした生き物が登場するわけで、今回はその中の1つをお話したいと思います。 小学校の4年生だったか5年生の頃、夏休みになって、仲の良かったM君から田舎の広島へ一緒に 行かないかという話を持ちかけられ、二つ返事でその誘いに乗りました。広島がどんなところか見当も つかなかったのですが、東京にはいない生き物を採集できるという点が一番の魅力だったのです。 親の勧めで、M君と二人きりで寝台列車を利用して広島まで行くことになり、上下2段の寝台車で楽しく 談笑しながら旅路を楽しみました。しかし、寝台列車ってやつは深夜に無人駅に停車したり、妙な 急カーブがあったりと、なんとも寝苦しく、しょっちゅう目が覚めました。M君はグッスリ寝ているのかと カーテンの隙間から覗き込んだら、近所の公園で拾ったエッチなマンガを夢中で読みふけっていたので、 きっと彼も寝苦しかったのでしょう。 そんなこんなで眠い目をこすりながら到着したM君の田舎は乳牛農家でした。ウシがいるのでハエも 沢山いて、食事時にはブンブンと凄いことになっていたので、宙を飛び回るハエに狙いを定めて箸で つまむことが出来たくらいです。都会っ子だった私はほのぼのした田舎に胸ときめき、農道でトラックを 運転させてもらったり、乳搾りをしたりと、すっかり自然と友達になったので、東京に帰る前夜になって、 何か生き物を連れて帰りたいと思い、M君と連れ立って夜の山を散策することにしました。 懐中電灯1つで裏山に入ると、ほどなくして見つかったのはヒバカリ。足元をスルスルっと走り抜ける 小さなヘビを、足で軽く踏みつけてから落ち着いて捕獲、、、のはずが、しっかりと振り向き様にガブリ と噛まれました。このヘビ、噛まれるとその日ばかりの命という猛毒をもつと思われていたのが名前の 由来ですが、実際は無毒。そんな話を知ってか知らずか、ヘビに噛まれたことを聞いたM君のおばさんは、 「毒があったら良くないから」と言いながら消毒薬を塗ってくれました。ま、毒に消毒は効きませんがね…。 ヒバカリはカエルや小魚、ミミズなどを主食にしている小型のヘビ。相当なマニアでも飼育は難しいと 感じる部類ですが、無知と無謀が相まって私はそのヘビを東京に連れて帰ることにしました。手頃な 容器がなかったので海苔の空缶をもらい、その中にヒバカリを入れて、帰路は新幹線でしたから それ程長い時間かからずに連れて来ることが出来たのです。 帰宅早々、私は家族への土産話もそっちのけで、その辺にあった適当なプラケースを用意し、空缶の フタを空けてヒバカリを取り出しました。元気良く缶から飛び出したヒバカリですが、その直後、なぜか 体をよじって大暴れしだし、突然悶絶したかと思ったら死んでしまいました。原因はよく分かりませんが、 空気の綺麗な田舎から、突然排気ガスだらけの東京に連れてこられたことによるショック死に違いない と思い込んでいます。きっと都会の空気はヒバカリにとって、「その日ばかり」の毒だったのでしょう。 悪いことをしたと、いつまでも脳裏から消え去らない私の記憶の1つです。 −−−このコラムへのご意見、ご要望はこちら−−− >ガラパコラムのバックナンバーを読む |