ガラパコラム

第5回目 ナガクビガメの聖域

(2003・2・20)

前回に引き続きオーストラリア北東部を旅行していたときの話です。

オーストラリアに到着して間もなく、僕と妻は熱帯雨林を散策するジャングルエコツアーというものに参加して
みようということになりました。僕達の行ったケアンズ周辺は、グレートバリアリーフと呼ばれるサンゴの綺麗な
海の他にも、巨大な熱帯雨林が有名です。爬虫類を見ることが旅行の主な目的の僕としては、是非その熱帯
雨林の中に足を踏み入れてみたいではないですか!早速ホテルから電話をかけて翌日の朝にガイドに迎えに
来てもらうことになりました。

翌日の朝早くにホテルの入り口で待っていると、1台のジープが到着しました。そして、車の中から細身で背の
高い金髪ボーイ(若かりし日のピーター・アーツのようなルックス)が登場です。僕達のところにノシノシと歩いて
くるなり「ハジメマシテ。ガイドのシェーンです。すいましぇーん。」と流暢な日本語でいきなりくだらないダジャレ。
そんな感じのほのぼのムードで、我々一行は熱帯雨林を目指します。

山道を1時間ほど進むと、道の先には金網のゲートがあって、しっかりと鍵がかけられています。シェーンの
説明によると、そのゲートの鍵は政府に許可を得た観光ツアー会社しか持っていないそうで、つまりは一般の
人間はそこから先には進むことが出来ないのです。さすがは、徹底した自然保護を行っているオーストラリア
政府。立派です。

鍵を開けて保護区内に入ったころ、僕はシェーンに「爬虫類が見たいんだけど、ここにはいるかい?」と聞いて
みました。「もちろん、ヘビやトカゲはたくさんいるけどなかなか姿を見ることは出来ないよ。」との返事。それでも
シェーンは頑張ってヘビを探してくれたので、なんとかヘビの動く気配くらいは感じることが出来ました。
さらに奥に進むと小さな川があり、そこで泳いでも良いということだったので、僕は川に入りました。(といっても、
水深1mもないくらいですが・・・)外気温に比べて水は異常に冷たく、最初はびっくりしましたが馴れてしまえば
気持ちいいもので、僕はメダカと一緒にスイスイ泳いでいました。

シェーンはその間、川の上流部の大きな岩の上にいたのですが、そこから僕達を呼んでいます。近くに行って
みると、「この岩の間にカメがいる」とのこと。岩の間といっても、そこは冷たい水が結構な勢いで流れている
部分なので、まさかこんなところにカメなんていないだろうと思って川の中を覗き込むと、水底にがっしりとカメが
しがみついているではないですか!僕はあんまり水ガメに詳しくないので、細かくはよく分からないのですが、
おそらくオーストラリアナガクビガメか、チリメンナガクビガメだったような気がします。(何しろ首が長かったので
ナガクビガメであることは間違いありませんが、ひょっとすると、ハヤセガメかもしれません)そのカメは、僕達が
見ている間ずっと水底にしがみついていました。シェーンが言うには、その前日も前々日も同じ場所にいたそう
です。

ほとんど人間が入り込まない自然のままの保護区内の、さらにひっそりとした川の中でナガクビガメはゆっくりと
した時間をすごしていました。我々が普段ペットショップで何気なく見かけるようなカメも、野生本来の姿を見ると
何となく神聖な感じがしました。

僕は爬虫類を見ることが出来たのでとても満足し、シェーンは爬虫類を紹介できて満足したようです。そしてその
場を満足げに立ち去る僕とシェーンの後を着いてきた僕の妻だけは、どうしてもナガクビガメと岩の区別がつかな
かったようで、結局カメがどこにいるのか分からずじまいだったそうです・・・。その気のない人には見つけられ
ない爬虫類の野生の姿、おそるべし。

下の写真は、その小さな川の様子です。手付かずの自然がそこにはありました。


−−−このコラムへのご意見、ご要望はこちら−−−

>ガラパコラムのバックナンバーを読む